趣味や部活でトランペットを吹いている人は、お手入れの方法も知っておきましょう。
この記事では、トランペットの日常的なお手入れと、演奏の後や定期的なお手入れについて詳しく紹介しています。
トランペットの構造
トランペットを洗浄する前に、各部位の名称を抑えておきましょう。
- マウスピース
トランペットの最も重要な部分で、演奏者は唇を振動させ、マウスピースで増幅することで音を出します。木管楽器で言うリードの役割をもちます。
マウスピースは真鍮(しんちゅう)やシルバーで作られており、カップの深さやリムによってそれぞれ異なる使用感と音色を生み出します。 - マウスパイプ
マウスピースから出た音が伝わる最初の管で、マウスピースによって増幅された振動を楽器本体に伝える役割を持っています。 - 主管抜差管
リードパイプからつながる半円状のパイプです。トランペットのチューニングは主管抜差管を前後させることで行います。ウォーターキーがついており、演奏時に溜まった唾液を抜く役割も持っています。 - バルブとピストン
トランペットには通常3本のバルブとピストンがついており、演奏者はピストンを操作してバルブ内に流れる空気をコントロールし音程を変えます。 - ベル
トランペットの先端部分で、音の拡声器の役割を持っています。ベルは放射状のアサガオ型で、音を広く放射するためにデザインされています。 - スライド(1番管、2番管、3番管)
一部のトランペットには、音程を微調整するためのスライドが備わっています。主管抜差管と合わせて「抜差管」とも呼ばれます。これらの装置を使用することで、特定の音程を微調整することができます。
トランペットは掃除が必要?
金管楽器や木管楽器は、演奏後は必ずお手入れが必要です。
金管楽器であるトランペットは、演奏すると楽器の中に呼吸による湿気を溜め込みます。
長く吹いていると、水滴となって現れるのですが、管楽器にとって水分は管体を劣化させる主な原因になります。
また、各スライド部分にはオイルが塗られています。オイルは古くなると汚れを溜め込むので定期的な洗浄が必要です。
演奏時には手あかが付き、表面のラッカーを劣化させるので、拭き掃除も欠かせません。
特にシルバー製のトランペットや、ノンラッカーの特殊なトランペットの場合はこまめに洗浄する必要があります。
トランペットの日常的なお手入れ方法
まずは、演奏後や久々に練習するときの日常的なお手入れ方法について解説します。
トランペットの洗浄に当たっては、専用の道具が必要になるので事前に用意しておきましょう。
様々な種類の道具が必要ですが、いずれもトランペットを扱っている楽器店で購入が可能です。
定期的に使うので、この機会にそろえておきましょう。
トランペットの洗浄に必要な道具 |
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演奏前のお手入れ
使用する道具 |
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トランペットのバルブは正常な状態であれば、滑らかに動きます。演奏前にかしゃかしゃ乾いた音がするようであれば、各バルブにバルブオイルを塗布します。
演奏前にバルブのピストンを取り外し、ピストンの太い部分に1〜2滴ずつオイルを塗りましょう。ピストンを取り付けて、スムーズな動作が戻っていれば完了です。
バルブキャップ(笠ネジ)も締め直し、緩みがないことを確認します。
演奏後のお手入れ
使用する道具 |
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演奏後はトランペットを分解して乾拭きします。
まずは主管抜差管についているウォーターキーから、楽器の中に溜まっている唾液を抜きます。
次に、ピストンを抑えながら1番管、2番管、3番管のそれぞれのスライドを抜きます。主管抜差管も抜きましょう。
それぞれのスライドの中をクリーニングスワブを通し、中に残っている水分を拭き取ります。水分が無くなるまで繰り返しスワブを通しましょう。
このとき、スワブにシワがついているとスライドの中で詰まってしまうこともあるので、シワを伸ばしてスワブを挿入するようにします。
次に目の細かいなめらかなクロスで楽器本体についた指紋を拭き取ります。
指紋は長時間放置すると楽器表面のラッカーを劣化させるので、丁寧に拭き取りましょう。
また、タオルやハンカチなどは楽器の拭きあげには適しません。目の粗い布を使ってしまうと、楽器の表面に小さな傷を作ってしまいます。
メガネや宝石に使う布と同じような、なめらかなクロスを使用しましょう。楽器店に行くとトランペット用のクロスが購入できます。
クロスでマウスピースも軽く拭いて、日常的なお手入れは完了です。
トランペットの本格お手入れ方法
部活などで頻繁にトランペットを演奏する人は1週間に1回、もしくは月に1回の頻度でしっかりとした洗浄を行いましょう。
抜差管の洗浄
頻度 | 週に1回 |
使用する道具 |
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1〜3番管と主管抜差管にはオイルやグリスが塗られています。
オイルは空気と触れ合うことで酸化するので、定期的に入れ替えてあげる必要があります。
トランペット用のクリーニングロッドにガーゼを巻きつけ、スライドの外管と内管に付着した古いオイルを拭き取ります。
強い力で行うと管が変形してしまい、組み立てられなくなるので注意しましょう。
特に、ラッカー処理のされてない内管は繊細です。シルバー製の楽器は素材が柔らかいのでさらに変形しやすくなるので注意が必要です。
きれいに拭き取れたら、1番管と3番管にはチューニングスライドオイルを、2番管にはスライドグリスを塗って2〜3回スライドさせてなじませます。
管体内部の洗浄
頻度 | 月に1回 |
使用する道具 |
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月に1回はトランペットを分解して管体内部の洗浄も行いましょう。
これまで説明した手順で、スライドとバルブを楽器本体から取り外します。
ブラスソープを10分の1ほどに水で希釈してタライなどに入れておきます。ブラスソープがなければ食器用の中性洗剤でも代用可能です。
分解した管の中に水とブラスソープを流し込み、フレキシブルクリーナーで丁寧に洗浄します。
楽器本体とスライドの洗浄が終わったら、今度はバルブのピストン部分を洗浄します。
ピストンはトランペットの中で最もデリケートなパーツです。スライドと同じくフレキシブルクリーナーとブラスソープを使って洗浄しますが、さらに丁寧に行い絶対に落としたり、ぶつけたりしないようにしましょう。
またバルブや主管抜差管にはコルクやフェルトが取り付けられています。
あまり水に濡らすのはよくないので、極力濡らさないように作業を行いましょう。
全ての工程が終わったら、タオルの上で軽く水分を拭き取り、しっかりと乾燥させます。
乾燥ができたら、スライド部分にはチューニングスライドオイルを、バルブにはバルブオイルを塗って楽器を組み立てます。
マウスピースのお手入れ方法
頻度 | 週に1回 |
使用する道具 |
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毎回やると言う人もいますが、少なくとも週に1回はマウスピースの中も洗浄します。
10倍に希釈したブラスソープをタライにためておき、マウスピースをひたします。
その中で、マウスピースブラシを使って丁寧にこすり洗いしましょう。
タオルで軽く水分をとって、乾燥させて完了です。
年に1回はオーバーホールに出す
トランペットの洗浄は基本的には自分で行いますが、年に1回は楽器でオーバーホールしてもらいましょう。
自分では分解できないパーツや消耗品を取り替えてもらい、楽器をリフレッシュさせます。
プロの手に任せることで、新品に近い吹き心地が戻ってくるでしょう。