近年、一般の家庭からも注目を浴び始めた「ナノバブル」は、先んじて医療機関への導入が進められています。
では、なぜナノバブルは医療分野でも注目が高まっているのでしょうか?
この記事では、医療機関におけるナノバブルのニーズの高まりと、実際の活用事例について解説していきます。
ナノバブルとは
まずはナノバブルの特徴を紹介していきます。
ナノバブルは、私たちの生活を豊かにする様々な特性と効果を持っています。
ナノバブルの特徴
ナノバブルとは、気泡の直径が1μm(0.001mm)未満の非常に小さな泡のことで、プラチナノバブル™︎とも呼ばれることがあります。
特殊な装置によって生成されますが、その小ささから肉眼ではとらえることができません。
しかし、ナノバブルを含んだ水にレーザーの光を当てると、光がかく乱されレーザーが直進しているように見えます。ちなみに、普通の水の場合は光がぼやけて見えます。
その泡の小ささから、様々な場所に入り込むことが可能です。
そのほかの泡とナノバブルの違い
日常生活で私たちが目にすることのある泡は、「ミリバブル」や「センチバブル」と呼ばれる泡で、その名前の通りミリ単位センチ単位の大きさをもつ泡です。
また、ナノバブルとミリバブルの中間の大きさのものを、「マイクロバブル」とよびナノバブルとは区別しています。
ナノバブル以外の泡が持っていない特徴として、ナノバブルは泡の大きさが非常に小さいので中に含む空気の量が少なくほとんど浮力がないという点です。
そのため、水の中でナノバブルが発生すると、他の泡のように水面に浮かび上がらずに、数カ月から半年ほど水の中に止まり続けます。
さらに、ナノバブルはマイナス電荷を帯電しており、プラス電荷をもつ物質に吸着するという性質を持っています。同時にナノバブル同士は同一の電荷をもつため、くっついて大きくなることもありません。
医療分野以外での活躍
医療で注目されているナノバブルですが、そのほかの分野でも幅広く活用されています。
例えば、排水処理場では水質浄化に利用されたり、公共施設のトイレの水にナノバブルが使われていたりします。
食品工場の機器の洗浄、普通の水では洗浄が難しい小さなパーツの洗浄、農業や漁業、さらには研究施設など例をあげるときりがありません。
ナノバブルは、近年になって生成装置が小型化されたことで一般的にも認知され始めましたが、それ以前から日々の人間の暮らしを支える技術として知られています。
ナノバブルが医療に注目されている理由
通常の泡とは違う特性をもったナノバブルは、なぜ医療分野で注目されているのでしょうか?
洗浄力の高さ
ナノバブルの小さな泡は、あらゆる隙間に入り込みます。
物質と汚れの隙間にたやすく入り込むことができるので、通常の水では落としきれなかった汚れを落とすことが可能です。
また、普段目の届かない排水口の奥や配管の中の汚れなど、ナノバブルを使用しているだけで自然ときれいになり、病院内を清潔に保つことができます。
配管内に固着した尿石などもはく離させて落とすこともできるので、詰まりや臭いなどの予防も容易になります。
薬剤の削減・効果アップ
洗剤など薬剤を使わなくても、ナノバブルはあらゆる汚れを落とすことが可能です。
特に有機物や油汚れなどに対して有効で、人間由来の汚れが付着しやすい医療現場でナノバブルは活躍します。
実際に、お化粧や油性ペンの汚れを洗剤やクレンジングを使わずに落とすこともでき、洗剤などの消費を抑えることができます。
また、医療機器によっては、パッキンやシーリングがついており、洗剤を使うことで徐々に傷んでいきます。
ナノバブルを使うことで、これらのパーツの腐食を防止できます。
反対に、ナノバブルと洗剤を組み合わせることで、ナノバブルが洗剤に含まれる界面活性剤作用を高めることが報告されており、さらに高い洗浄効果を得られます。
洗浄時間の短縮
医療機器などの洗浄は、高い清潔性を求められるため、入念に洗浄されます。
通常であれば、水と洗剤を使用して洗い、その後に殺菌や滅菌を行います。
ナノバブルを含んだ水であれば、洗う時間を短縮できるので、医療機器の劣化や医療現場の業務負担の軽減につながっています。
幅広い用途
医療現場で使用されるナノバブルは、水や水道管内の気体のみを使って生成されます。
そのため、アレルギーなどが起こる心配がなく、誰でも安心して使用できるのです。
医療機器の洗浄はもちろん、患者の体のケア、掃除や洗濯などあらゆるシーンで利用されます。
また、医療分野とも関わりの深い美容関連の製品にもナノバブルを応用したものがあり、製品開発にも利用されています。
医療機関でのナノバブル導入事例
それでは実際に現在ナノバブルが医療機関で活躍している事例を紹介していきます。
透析機器の洗浄
人工透析の機械の洗浄にナノバブルは使用されています。
人工透析には逆浸透膜と呼ばれるろ過システムが使用されています。逆浸透膜は微細な孔が空いており、液体を分子レベルで浄化する装置です。
RO膜とも呼ばれ、経年や洗浄によって劣化していきますが、ナノバブルでの洗浄を取り入れることで劣化を防止しています。
石膏トラップの洗浄
医療部門の中でも、特に歯科クリニックではナノバブルの導入が進んでいます。
石膏くずをキャッチする石膏トラップは、汚れの溜まりやすい装置で定期的な洗浄が必要です。
ナノバブルは、石膏トラップを汚れにくくし、詰まりを防止して石膏トラップの掃除時間を短縮することに用いられています。
また、パッキンを使う医療機器が多いため、劣化を防ぐという面でもナノバブルが役立っており、患者が口をゆすぐための水としても利用されています。
介護での利用
ナノバブルは水と空気のみで作られるので、多くの人が安心して利用できます。また、ナノバブルを含んだ水は温めてお湯にしてもナノバブルは消えません。
そのため、患者や利用者の入浴や体の洗浄にナノバブルは用いられています。
介護現場では、患者や利用者の身体を洗浄するために多くの時間とコストがかかっており、一人ひとりを丁寧に洗うことは非常に労力がかかります。
ナノバブルの優れた洗浄力を活用することで、入浴やシャワーだけでも十分に汚れを落とすことが可能です。
介護の現場での労力を軽減でき、患者や利用者のケアに集中できるようになります。
病院着、制服などの洗浄
毎日病院で使用する、病院着や制服、ベッドシーツなどの洗浄にもナノバブルは効果的です。
ナノバブルの小さな泡は、衣類の繊維に入り込み、汚れや臭いの原因となる雑菌を取り除きます。
ナノバブルの消臭効果は非常に高く、皮脂由来の加齢臭にも効果があることがわかっています。
まとめ
ナノバブルが医療分野で注目されている理由と、実際に活用されている一例を紹介しました。
これまでは、ナノバブルを発生させる装置は大掛かりで、日常使いにも向きませんでしたが、近年小型化に成功したことも注目される背景となっています。
自治体によっては、医療機関へのナノバブルの導入に補助金を給付するケースもあり今後さらに広がっていくことが予想されています。