近年、一般にも知られ始めた「ナノバブル」は普通の泡にはない様々な効果や特性を持っています。
その特性の一つとして、水面に上がってこず、他の泡のように消えないというものがあります。
では、ナノバブルの泡はどのくらいの期間水中に存在し、消滅する時間はどのくらいなのでしょうか?
この記事では、ナノバブルの詳しい特性と効果、そのほかの泡との違いについて紹介していきます。
バブルの種類
ナノバブルという名前があるように、私たちが普段目にする泡やそれ以外の泡にも名前がつけられています。
それぞれ、ナノバブルとは異なった特徴を持っています。
センチバブル・ミリバブル
炭酸飲料のボトルについている泡や、石けんや洗剤によってできる目にみえる泡を「センチバブル」や「ミリバブル」と呼びます。
気泡の大きさが、センチ単位やミリ単位の泡のことで、多くの人が泡のイメージとして持っているのがセンチバブルやミリバブルです。
水流の変化や、液体に含まれるガスの過飽和、洗剤に含まれている界面活性剤などの効果で発生します。
泡立つと汚れが落ちるイメージがありますが、センチバブルやミリバブルの泡自体には洗浄力を高める効果はなく、洗剤に含まれる界面活性剤の効果によって汚れが落ちます。
ちなみに、界面活性剤には泡を長持ちさせる効果もあります。
水中で発生すると、含まれる気体によって浮力が生まれ、間もない時間で水面に出て消滅します。
マイクロバブル
センチバブルやミリバブルよりも小さい泡を「マイクロバブル」とよび、その気泡のサイズは0.1mm未満、0.001mm以上です。
泡の一つずつを目で見ることは難しいものの、マイクロバブルが集まると水中が白濁したように見えます。
銭湯などに行くと、マイクロバブルが発生する装置を設置しているところもあり、白っぽく濁ったお湯を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
マイクロバブルを含むお湯や水に触れると、普段よりも柔らかい感覚があります。
マイクロバブルは、ミリバブルやセンチバブルでは入り込めない小さな隙間に入り込めることから、汚れを浮かせて落とすことも可能です。
そのため、清掃業者や製造業など、あらゆるシーンで洗浄用水として用いられることもあります。
大きな泡とは違い、発生してから時間をかけて浮かび上がるので、しばらく水中をただよって溶けるように消滅するか、通常の泡と同様に水面に浮かび上がって消滅します。
ナノバブル
「ナノバブル」はマイクロバブルよりもさらに小さい泡で、その大きさは0.001mm未満と定義されています。
その小ささから目では見ることができず、ナノバブルを含んだ水を見ても普通の水と変わらないように見えます。
しかし、ナノバブルは、ほかの泡以上に高い洗浄力や様々な特性を持ち、幅広い分野で活用されています。
次章で詳しく解説していきます。
ナノバブルの特徴
ナノバブルはその小ささから、あらゆる特性を持っています。
隙間に入り込む
ナノバブルの大きさは1μm未満と非常に小さく、毛穴や機器の隙間はもちろん、吸着した汚れと物質との間にも入り込むことができます。
そのため、こびりついたような頑固な汚れでもナノバブルで落とすことができます。
例えば、クレンジングを使用せずにメイクを落とせ、油性ペンも洗剤を使用せずに落とすことができます。
公共施設では、トイレの配管にたまった尿石をはく離させるのにも用いられており、その他様々なシーンで使用されています。
ナノバブルは、あらゆる隙間に入り込むことで、通常の泡は持たない高い洗浄力を発揮します。
帯電している
ナノバブルはマイナスの電荷を帯電しており、これはセンチバブルやミリバブルが持っていない特性です。
気泡が帯電するメカニズムはまだ解明されていませんが、一説にはナノバブルの気泡は-OHと+HOが集まりやすく、イオン密度が水と比べて高まるため、結果的に帯電すると言われています。
また、-HOの方が集まりやすいことからマイナスの電荷を帯電しています。
そのため、プラス電荷をもつ物質に吸着するという性質を持っており、細菌や油などのプラス電荷をもつ汚れに特に効果を発揮します。
光をかく乱する
ナノバブルは目で捉えることはできませんが、ナノバブルを含んだ水にレーザー光線を当てると、光がかく乱して水の中をレーザーが真っ直ぐに進むように見えます。
ナノバブルの泡は可視光線の波長よりも小さいため、目で捉えることができないのですが、レーザーを当てると、ナノバブルの軌道を光が反射しその存在を確認できるようになります。
ちなみに、純粋にレーザーを当てると泡が含まれていないので、レーザー光線の軌道はぼやけて見えます。
この方法を応用して、水中にあるナノバブルの数や大きさを測定しています。
浮いてこない
ナノバブルは浮力がほとんどなく、水面に浮かび上がって来ることはありません。
そのため、しばらく水中をただよった後に、時間をかけて消滅していきます。
また、ナノバブルの気泡はお互いにマイナス電荷をまとっているため反発し、くっついて大きな泡になることはなく、浮力が大きくなって浮かんで消滅することもありません。
この特性は、貯水タンクや排水管のトラップ部分の洗浄に効果的で、ナノバブルを含んだ水をためておくだけでその部分が自然と洗浄されます。
では、この効果はどれくらい継続するのでしょうか?
ナノバブルの消滅時間
マイクロバブルは水中で気泡が発生してから、10分から12分ほどの時間をかけて水面に上がり消滅します。
さらに小さいナノバブルは水面に上がってくることはほとんどなく、水中内で反発しあいながらブラウン運動を続けます。
そのため、外部からの刺激を与えなければ、数カ月から半年、環境によっては1年以上も水中に残り続けることがわかっています。
ナノバブルは、長時間水中をただよい、その後水に溶けるようにして消滅します。
また、気泡が消滅する際に発生するフリーラジカルにより、菌やウイルスの活動を抑制することも報告されています。
これらの特性から、ナノバブルを含んだ水やお湯をためておくだけで、その部分の洗浄が可能となっています。
ナノバブルの消滅を観測する方法
ナノバブルは小さな粒子やウイルスと同程度のサイズであるため、特殊な観測方法によって確認されます。
- 粒子軌跡解析法
粒子軌跡解析法は、粒子などの小さな物質のブラウン運動を観測する方法で、液体にレーザー光をあて、ナノバブルによる光の散乱をカメラで捉えることで、ナノバブルの速度と数を観察します。 - レーザー散乱回折法
ナノバブルにレーザー光を当てると、気泡の大きさによって光の回析する角度が異なります。 主にナノバブルの大きさを観測することに役立てられる方法です。 - 粒度分布測定
レーザー光をナノバブルの粒子群に照射し、検出面に投影することで液中のナノバブルの体積や大きさ、数を測定する方法です。 - 共振式質量測定法
「カンチレバー」と呼ばれる非常に小さな振り子を使った測定方法です。ナノバブルが含まれる水にカンチレバーを投入すると通常の水と比較してカンチレバー振動数が大きくなります。この原理を利用し、水中のナノバブルの数を測定します。
ナノバブルの消滅を確認するには主に、粒子軌跡解析法と共振式質量測定法が用いられます。
ナノバブルの消滅に影響を与える事象
ナノバブルには個体差があり、大きさによって消滅時間が異なります。
小さいほど消滅時間が短いと言われていますが、私たちが体感できるうちでは一瞬とよべる違いしかありません。
マイクロバブルはいずれ水面に浮上して消えてしまいますが、気泡が小さくなる過程でナノバブルになると安定化ししばらく水中を漂い続けます。
ナノバブルの消滅時間を伸ばすには
ナノバブルは界面活性剤を気泡の表面に添加することで、従来よりも長持ちさせることが可能です。
また、ナノバブルは単体でも高い洗浄効果を発揮しますが、洗剤に含まれる界面活性剤の効果を高めることもわかっており、汚れを落とす上での相乗効果が期待できます。
ナノバブルの活用方法
ナノバブルの特性を生かした活用シーンの一例を紹介します。
トイレの水に
トイレは便器の水たまり部分や、タンク内に常に水をためており、またどちらも洗浄が難しい部分でもあります。
ナノバブルをトイレの水に用いることで、水たまりとタンクを使用しながら清潔に保つことが可能です。
ナノバブルが長時間水中に止まり続けることで、水あかや黒カビの発生の抑制になり、トイレの臭いも軽減してくれます。
排水管のトラップに
キッチンや洗面台、お風呂の排水口の奥にある排水管には、外部からの害虫や臭いの侵入を防ぐための「トラップ」と呼ばれる水たまりが設置されています。
洗面台の下にある排水管を見ると、パイプがU字に曲がっているのがわかります。このU字の部分がトラップです。
このカーブしている構造上、汚れがたまりやすい部分で、トラップ自体が臭いを発生させ、菌や害虫の発生源になることもあります。
生活用水がナノバブルになることで、トラップにたまった汚れや、臭いの原因となる雑菌を、毎日使用するだけで洗浄可能です。
お風呂の給湯システムに
お風呂の給湯システムや追い焚き配管の管内は、家庭の中でも特に掃除が難しい場所です。
しかし、放置してしまうと体から出た皮脂や汚れがたまり、雑菌を繁殖させてしまいます。
お風呂のお湯がナノバブルになることで、配管内に汚れをためずにお風呂を使用でき、同時に湯船についた汚れも洗浄してくれます。
以上のように、ナノバブルは長時間水中に止まり続ける性質をもつことから、これまで手間のかかっていた部分の洗浄を簡単にしてくれます。
面倒な掃除時間の短縮になるので、一般の家庭にも導入が進んでいる注目の技術です。
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