近年ではインフラが整い下水処理施設も増えてきましたが、特定の地域では浄化槽の設置が義務付けられています。
そこでこの記事では、自宅にある浄化槽の取り扱い方についてお話ししていきます。
使える洗剤と使えない洗剤など解説するので、地方に移住した際、浄化槽のある家に住む際などにご参考ください。
トイレの浄化槽とは?役割を解説
浄化槽は、日常生活で発生するトイレやキッチン、お風呂などから排出される生活排水を浄化する装置で、一般家庭の軒下や地下に取り付けられています。
生活で発生した汚水をそのまま排水してしまうと、周囲の環境に悪影響を及ぼしたり、衛生的にもよくありません。
浄化槽は、微生物が有機物を分解する作用を利用して、生活排水を浄化し、安全な水に変える役割を果たします。
浄化槽内で生活排水は浄化され、自然に戻されます。
都会では下水道が整備されていますが、地方の一部地域では下水施設が設けられていないエリアもあり、地域によって浄化槽の設置は法律で義務付けられています。
浄化槽の構造と種類
浄化槽は構造によって2つの種類に分かれます。
単独浄化槽
単独浄化槽は、し尿(水洗トイレからの排水)の処理だけを行います。以前は一般的でしたが、現在は法律の改正により、新たな設置が禁止されています。
合併浄化槽
合併浄化槽は、し尿だけでなく、生活排水(台所、お風呂、洗面所、洗濯排水など)も一緒に処理が可能です。
現在は、浄化槽といえば主に「合併浄化槽」を指します。法律では、合併浄化槽を用いて生活排水の衛生処理と環境保全を行うことが求められています。
単独浄化槽はもとから設置されていた場合、そのまま使用することは可能です。しかし、現在の規制では、し尿のみを処理する単独浄化槽を新たに設置することは禁止されており、合併浄化槽への入れ替えが推奨されています。
浄化槽に起こるトラブル
浄化槽は生活排水を扱うため、臭いを発生させることがあります。
臭いの原因はいくつか考えられますが、主な原因は浄化槽内の微生物の働きが十分でないことがあげられます。
浄化槽は微生物の力を使って、臭いや汚れを分解します。この微生物の働きが弱まることで、浄化槽から臭いが発生します。
寒い季節には微生物の活動が低下し、臭いが発生しやすくなりますが、暖かい時期であっても、生活習慣や使用する洗剤によって微生物を減らしてしまうことがあります。
臭いを防ぐには、微生物に有害な成分を含まない洗剤を選び、浄化槽の働きを弱めない習慣が必要です。
まれに、送風機の故障によっても臭いが発生するので、定期的な点検も行いましょう。
浄化槽の働きを弱めること
浄化槽の働きを弱める原因となることについて解説していきます。
生ゴミを流す
浄化槽にキッチンやトイレから生ゴミを流すことは、配管のつまりや浄化槽に負担をかけ、処理能力を低下させます。
生ゴミは指定された日にゴミとして出しましょう。
合わない洗剤の使用
キッチンやトイレ、お風呂で使用する洗剤は浄化槽にあったものを選び、使用量を守りましょう。
余分な洗剤は浄化槽の微生物の働きを弱めます。特に、次亜塩素酸ナトリウムのような強力な殺菌剤は微生物を殺菌する可能性があるため、注意が必要です。
トイレットペーパー以外の物を流す
トイレットペーパー以外のものをトイレに流すことは避けましょう。
おむつやタバコの吸い殻、新聞紙などは浄化槽内の働きを弱めます。さらには、配管の詰まりや浄化槽内の故障の原因になることもあります。
大量の水を流す
キッチンで洗い物をする際や浴槽の水を抜く際に、一度に大量の水を流さないようにしましょう。
浄化槽内で処理しきれない水が流れ込むことで、浄化槽の負担が増加し故障や臭いの原因になります。
油やゴミを流す
浄化槽の微生物は大量の油を分解できないため、油汚れを流すことは悪臭の原因となります。また、油が固まって配管を詰まらせることも考えられます。
揚げ物の後は油を取り除き、排水にはなるべく油を流さないように心がけましょう。
浄化槽の掃除は自分で可能か?
浄化槽は自分で点検や掃除を行うことはできません。
浄化槽の保守点検は、「浄化槽保守点検業者」に委託する必要があります。
浄化槽保守点検業者は、機械の点検や補修、消毒剤の補充など、浄化槽の正常な動作を維持するための作業を専門に行っている業者です。浄化槽管理士としての国家資格を持つ専門家が点検を行います。
また、浄化槽内にたまる汚泥や異物を取り除く清掃作業は、市町村から許可を受けた「浄化槽清掃業者」に委託する必要があります。
トイレの浄化槽で使える洗剤
誤った洗剤を使用してしまうことで、浄化槽の中の微生物の働きを弱めてしまい、汚れや臭いの原因になります。
特にトイレ用の洗剤は殺菌力が高いものが多く、注意して選択する必要があります。
浄化槽が設置されている物件で、使えるトイレ用洗剤は、塩素系、酸素系、中性の3つの種類です。
どれも一般的な洗剤ですが重要なのは、「浄化槽対応」の表示がある製品を選ぶことです。
浄化槽対応の洗剤は、浄化槽内の微生物に悪影響を及ぼさず、浄化プロセスを妨げないように設計されています。
また、洗剤を使用する場合は、必ず洗剤の表示に従って適切な量を使用しましょう。
さらに注意するなら極力洗剤を使わずにトイレの清掃を行うことも考えます。
軽い汚れであれば、消毒用アルコールをトイレットペーパーに染み込ませて拭き掃除を行うことで、洗剤の使用量を減らして便器の掃除が可能です。
尿石や水あかに対処するためには、クエン酸を溶かした水を使うことも効果的です。
浄化槽の働きを保つ方法
浄化槽の働きを維持するためには、排水管内をできるだけ清潔な状態に保ち、微生物の働きを妨げないことが大切です。
浄化槽に対応した排水管洗浄液には、微生物の働きを助け、排水管の中を洗浄する酵素が含まれています。
浄化槽対応の排水管洗浄液は化学薬品を使用しておらず、浄化槽内の微生物の働きを妨げずに活性化させます。
もし、日常生活で強力な洗剤を使用してしまっても、浄化槽が正常に機能するように微生物の数を増やす効果も期待できます。
浄化槽の清掃は法律で定められている
浄化槽は、設置後20年から30年の使用が可能で長く使う設備です。
長い使用期間中には、法律によって点検と清掃が義務付けられています。
- 使用開始後の初回検査
浄化槽を新たに設置した場合、使用開始後の約6〜8カ月の間に、都道府県知事が指定した検査機関による初回の検査を受ける必要があります。
この検査では、浄化槽の正確な設置状況や基本的な機能の確認が行われます。 - 年次検査
使用開始後、その後は1年に1回、都道府県知事が指定した検査機関による年次の法定検査を受けることが法律で義務付けられています。
この年次検査においては、浄化槽の定期点検と清掃の実施状況、処理水の分析、浄化槽の正常な運用が確認されます。
まとめ
浄化槽で使える洗剤や扱い方について解説してきました。
トイレ用洗剤は殺菌力が高いので、通常のものを使用してしまうと浄化槽の働きを弱めてしまうこともあります。
浄化槽が設置されている家では「浄化槽対応」のトイレ用洗剤を使用するようにしましょう。
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